第1回講座:「ローカリゼーションは今、ここから始まる」
講師:辻信一氏
開催日時:令和8年1月10日15時~
場所:保健福祉総合センター和楽 大研修室
講座受講人数:64名
目次
概要
環境=文化NGOナマケモノ倶楽部の代表である辻信一さん、令和5年の前回講座以来、ありがたいことに佐伯市にとても関心を持って頂いています。本講座では、これまで聞きなれなかったLocalizationの概論と今回の地元学の講座のラインナップの関連性について解説を頂く会となりました。全体は2部構成となっており、1部では世界で広がるLocalization運動のきっかけとなった映画、チベットはラダック地方の変遷ドキュメンタリーの「幸せの経済学」の視聴、第2部での辻信一さんによる講座でした。
第1部映画「幸せの経済学」視聴
編集者雑感:「幸せとは何か?」インド北部のラダック地方におけるグローバル企業の進出の以前と以後の環境・経済そして人間性の変化を追いつつ、様々な研究者が語る現代経済の矛盾点。私たちの幸せというものの原点を突き詰めていくと、私たちがいかに大事にすべきことの優先順位を間違えているかに気付かされます。大事にすべきことをきちんと論理的に考えると、私たちが大事にすべきこと取るべき行動が自ずから決まってくるんだろうと思いました。編集者曽根田は、目の前のご飯を残さないこそが平和につながると思って宴会の後にできる限りご飯を持ち帰りしています。

出展:https://shiawaseno.net/
第2部「Localizationは今、ここから始まる」
講座はこの言葉から始まります。「ある問題を引き起こしたのと同じマインドセット(思考方法)のままで、その問題を解決することはできない。」 (アルベルト・アインシュタイン)

現在世界は様々に変化し、そして環境や経済や国際関係など多くの問題が依然解決しないまま進行しています。これまでも解決策を模索し対峙してきたはずですが、現在の様子は皆さんご存じの通り。これまでの課題解決方法は、分離をしてモノのように扱う対処療法が広くなされてきました。精神と身体、人間と自然、都市と地方のようないわゆる二元論的に物事を考えることが、広く一般的になりすぎていて、ここにそもそもの問題があるように考えられています。全ての物事はつながりがあり、地球全体を一つの生命体として考えるガイア理論的な思考方法がこれからの時代の課題解決に必要な方法となります。これらは、ホリスティックサイエンスと呼ばれ、日本でも古くから山川草木悉皆成仏という言葉でこの全体性とのつながりを意識してきました。科学の発展も二元論的なニュートン力学では既に説明が困難になっており、その思考方法としての東洋思想的な自然観(全体観)を持つことが、量子力学を始めとする宇宙物理学の世界への理解につながっています(F・カプラー「タオ自然学(1975)」)。
また、世界の課題を世界の課題として難しく考えるのではなく、実は足元に答えがある。成長と拡大と生産性・効率性というとめどない物語を追いかけるのではなく、「十分だよ、私たちは満ちてるよ」と言える今を楽しみましょう。
農業の世界ではこの実践が既に成果を示しており、昨今では大地再生(Regeneration)として世界的に注目が広がっています。北海道のメノビレッジ長沼が先駆者として有名です。Localizationの課題の多くに食の課題があります。例えば日本の食糧自給率は現在37-38%を推移していますが、国内需給できていると思われている農産物も肥料や農薬や生産器具までをも考慮すると食糧自給率は10-20%まで落ち込むと言われています。その食の課題の背景はまさに農薬や肥料、そして種の話。大地の課題解決にこそ、Localizationの希望があるのです。中村桂子さんの生命誌観がいうように、人間も大地に潜む微生物も全て地球上の生物の一部に過ぎません。大地を本来あるべき姿に戻していくことで、私たち人間世界もきっとよくなるはずでしょう。
日本に立ち返ってみると、江戸時代の思想家安藤昌益は「互世直耕」として人間と自然が相互に関係することを目指し、豊後聖人と呼ばれた三浦梅園は「枯れ木に花咲くに驚くより、生木に花咲くに驚け」と、日頃の当たり前という事象が全て奇跡的に尊いことなのだと説きました。また、近年の自然農の先駆者である福岡正信氏による農の革命は、海外でも波及し有名になっています。私たち日本人はもともと全体観を持ち合わせているはずなのです。
Localizationの反対言葉は”過度なGlobalization”を指します。第1部の映画で見たように、それまでに外部から隔世されていた豊かな世界がグローバリゼーションの波が侵食するとたったの10年で、人々の意識まで変わってしまうようなことが起きます。華やかで完璧そうに見える世界は人々の心を掴み、差分を生んでしまう。その一方でそれら経済性と文化のグローバル化が進むにつれて10年で景観的にも、自然的にも、人々の心理的にもこれまで持ち合わせていた美しさが失われてしまいます。Localizationが持つ別側面に、消費の在り方があります。Globalizationでは、儲けと効率性のために食品であっても悪意のある処理がなされている場合があります。しかし、これらの悪意は顔が見える関係性ではないために、悪意をオブラートに包み私たちの手元に商品としてやってきます。Localizationの世界では売り手と買い手の多くの顔が見える関係性にいます。そうした関係性においては、悪意のある商売ができなくなることでしょう。今年の地元学の講座にお呼びしている山崎亮さんはこうした顔の見える消費のカタチを面識経済と呼び、全国での地方経済の在り方に光を照らしています。佐伯では宝来家マルシェやあまべ食べる通信などの取り組みは世界的に見ても先駆的で素晴らしい取り組みがされている、こうした点を是非知ってほしいと思います。
これからのキーワードは、ローカル、コミュ―ナル、エコロジカル。人間だけではなく、自然の恵みと共にあることを改めて学び、考えてゆきましょう。

冨髙市長も公務の合間を縫って駆けつけてくれました。
講座後
ぼちぼち亭ぬうりん坊 による落語!!30名ほどの人が集まり、夜更けまで大爆笑していました。

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