2023年5月講座報告 【進化する里山資本主義】

去る5月21日日曜日にさいき城山桜ホール小ホールにて、佐伯市民大学(後期)第一回講座を実施しました。

講師は日本総研主席研究員の藻谷浩介氏で、圧倒的な知名度もあり、講座始まって以来の66名が受講しました。

通常参加する方が多い60代、70代はもとより、30代から50代の参加も30名に達し、休憩なしの2時間半ぶっ通しの講義で、熱気にあふれた講座となりました。講座の概要を報告します。

 

目次

 【事実認識の基本はデータ】


うわさや空気で情報を知ったつもりになってはいけない(チャットGPTは信用できない)。リーマンショック以降の2010年と2020年のデータ比較で、売り上げが増えた国内産業はどれかというと、一般的な予想としての小売り・サービス業は0%の伸びで、実は林業が13%と最も売り上げが伸びていることを知っている人は少ない。製造業が12%、農業も10%の伸びだ。
コロナ禍の最中の2021年の貿易収支で、実は日本は中韓台にも米英独にも勝ち続けている。

そんな日本が勝てないスイスとイタリアの特長とは① 観光立国、手作りブランド立国、② 高い人件費、短い労働時間、③ 大都市がなく、農山村に経済力、競争力がある。

日本が見習うとすれば、東京に稼ぎに行く必要はなく、一次産業を持つ地方の時代が来ているのだ。

 

【里山資本主義とは】

マネー資本主義で経済成長を拡大し続ける時代は終焉を迎える。里山資本主義とは共生と循環再生で持続する経済だ。蓄財ではなく「稼いだら使う」のが原則。里山資本主義者は、ヒト・モノ・情報を資本とし、自給・物々交換・恩送りなどを通じて活用、金利以外の利子を得る。例えば2014年の住民一人当たりの生活保護費の統計では、大阪市が118,000円と圧倒的一位。福岡市や東京特別区も5万から6万の間。佐伯市はその半分ぐらいで、阿蘇市などは13,200円と非常に低い。自然資本が豊かな地方の方が圧倒的に生活も豊か。大都会は自然資本がほとんどなく、自分の畑も持てないのでカネがなければ生きていけないのだ。

 

【かけがえのない人生への欲求】

これまで教育でも会社でも競争で優越が決まる時代だったが、これからは点数化できる優越ではなく、比較できないかけがえのなさ(=代りがいない自分、代わりがいない相手、満ち足りた人間関係)を目指す欲求が重要となるだろう。

 

【これからは木造近代建築の時代】

20世紀は 建築資材は鉄とコンクリートと新建材の時代だったが、21世紀は集成材を使った木造近代建築の時代だ。欧米では集成材の木造による高層ビルも常識になってきている。利点としては①解体して最終的に燃やすまでは CO2が排出されない、②伐採後に植林すると、若木がCO2を吸収する、➂断熱性が高く、冷暖房にかかるCO2が減る、④木材を近場で自給すれば、輸送時のCO2が減る。

 

【過疎は自然資本の豊かな適疎】

東京の可住地人口密度は国別で世界二位のオランダと比較しても16倍と異常に高い。日本の大都市圏は 世界的に見れば 異常なレベルの人口“過密”地なのだ。そんなところで仕事をし、老後を過ごすことを目指し続けるのか。東京でなければビジネスが成り立たないというのは日本だけのガラパゴス思考。大分県も世界的に見れば人口“適蜜”地帯。佐伯に住んで働き、行きたいときに都会で遊ぶ、豊かな未来は、目指せば実現する。大学はオンライン中心で卒業でき、何歳でも入りたければ入れる時代も、
いつでも実現できる状態。自分が「やらない」というだけのことを「できない」と言い訳してはいけない。若者にやらせてみることから始めよう。

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