講座報告04 宮沢賢治の自然観と「祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク(BR)」

【さいき7つの創生:1、5,6,7】
日時:2022年3月20日(日曜): 午後3時~5時
会場:佐伯市東地区公民館集会室
講師:日本文理大学名誉教授 杉浦嘉男

 

今回は杉浦先生による三回連続講座の最後となり、これまで学んだ賢治の自然観や生きざまと「地域づくり」の接点を三部構成で学んだ。

まず第一部「賢治の”ふるさと観””地域づくりの思い”~キーワードはイーハトーブ(理想郷)~」についてだ。イーハトーブは賢治のふるさとへの思いの結晶であり、岩手にあるドリームランドのような場所を指す。この発想から3つの特徴が導かれる。

 

第一の特徴は、どんな課題があっても絶対的肯定感を基盤とした「夢創造型のふるさとづくり」の大切さである。そこでダニエル・キムが提唱した「組織の成功循環モデル」のbad cycleとgood cycleの図式を比較しながら、bad cycleのように課題からスタートせず、good cycleのように関係性からスタートすると良い循環が生まれる、つまり夢創造型の組織や地域づくりに欠かせないということを知った。

 

第二の特徴は賢治の「全生命の平等観」であり、それはSDGsにもはっきりと示されていて、生きとし生けるものを含む自然なしに、人類の発展や幸福はあり得ないという事実に基づく。

 

第三の特徴はふるさとづくりに拠点を持って実践するということだ。賢治も花巻に羅須地人協会という農をメインテーマとした自然学校を設立し、貧しいながらも農業をめざす青年らに自らの理想を語り、彼らを育てたのだ。

 

 

第二部は実際に杉浦先生が佐伯市で体験した問題解決型の地域づくり事例として、現在佐伯市の本匠、八幡・西上浦、上浦の三地域に計画されているメガ風力発電事業についての地域の取り組みを挙げ、自然再生エネルギーとはいえ、高さ150m~200m近い風車を山頂に数十機建設することの地域への利益と弊害を、住民がどう学び、賛成・反対の意思を決定していくか、そうした問題解決型の事業の複雑で困難な事情を知ることができた。

 

一方で、佐伯の魚付き林を子どもたちが調べ、パンフレット作製に至るといった、ふるさとの自然を宝として再認識(実は日本で初めて佐伯の殿様毛利高政が魚付き林のお触書を創り、森と川と海が連関した自然保護を唱えた)できたという夢創造型の地域づくりの事例も学んだ。

第三部として「祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク」について、国連機関のユネスコが世界にある優れた生態系の保護と持続可能な利活用を目指して作った制度であるという説明の後、鷹取屋の森や藤河内渓谷など、佐伯市の宇目の貴重な自然も含めたユネスコエコパークの多様な事業の説明があった。

例として、学術的研究や調査・研修への支援として一般用と子供用の学術解説冊子や案内ブックレットの作成と配布、エコパークトレッキングやロッククライミング体験などの次世代育成事業、PR事業としてのスタンプラリーやフォトコンテスト、そして、ユネスコエコパークのブランド米の試験的開始など、沢山の取り組みを知った。

 

 

宮沢賢治の文学や人生を通して3回にわたって学んだ、彼の自然観、世界観、そして故郷の人々と故郷の自然への愛が、見事に地域づくりへと展開して、三回連続講座は完結した。杉浦先生には後期講座の最後の方で、再び地域づくりのワークショップをご指導していただくので、令和6年に再度ご期待願いたい!

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP